項目ごとに回答を掲載
Q1 浄土宗ってなに?
A.浄土宗とは『法然上人』を宗祖とする仏教宗派です。
『極楽往生のためには、ただひたむきにお念仏しなさい。』という、法然上人の御教えを根本思想とし、『南無阿弥陀仏』のお念仏によって極楽往生を願う宗派です。
Q2 法然上人?
A. 法然上人は長安2(1133)年に美作国(現在の岡山県)に、父・漆間時国(うるまのときくに)と母・秦氏(はたうじ)との間にお生まれになりました。
幼名を「勢至丸(せいしまる)」といい、両親の愛情を一身に育てられましたが、1141(保延7)年に、父・時国公は、明石定明(あかしのさだあきら)という人物に夜討ちされ、非業の死を遂げられました。
これを機に勢至丸は母方の叔父にあたる「観覚(かんがく)」の元で、仏教の手ほどきを受け、1145(天養2)年、13歳の時に比叡山に上りました。
まず持宝房源光(じほうぼうげんこう)上人について受学し、1150(久安6)年・法然上人18歳の時に、慈眼房叡空(じげんぼうえいくう)上人に師事しました。
この時に叡空上人から『法然房(ほうねんぼう)』という房号が与えられ、さらに源光上人の『源』の字と、叡空上人の『空』の字を取って『源空(げんくう)』という僧名を付けられました。
その後法然上人は黒谷の地で43歳まで『何人も平等に救われる方法は無いのか?』と、経典をもとに苦悩されましたが、ある時中国の『唐』の時代の人物である『善導大師(ぜんどうだいし)』がお書きになられた『観経疏(かんぎょうのしょ)』という文献の中に
『一心に専ら弥陀の名号を念じて行住坐臥 時節の久遠を問わず 念念に捨てざる者 是を正定の(之)業と名づく 彼の仏の願に順ずるが故に』
という一文に出会い、意味は『阿弥陀仏のお名前を一心にお唱えすることが、正しい修行方法である』ということから、『お念仏によって、善人も悪人も性別や身分にとらわれず、平等に往生できる』ということを確信され、1175(承安5)年の春に、浄土宗を開宗されました。
法然上人がお説きになった『お念仏の御教え』は瞬く間に広がり、現在に至るまで数えきれない人々が救われてきました。
2011(平成23)年で、法然上人が御往生されてから800年になりました。法然上人が御往生されてからも800年間伝え・守られてきた『お念仏』の御教えを心の支えにして、私たち浄土宗の檀信徒は日々過ごしてゆきたいものです。
Q3『お念仏』ってなに?
A.『南無阿弥陀仏』を声に出してお唱えすることです。
「南無」は『お願いします』という意味なので、直訳すれば『阿弥陀仏様、お願いします』ということになります。
阿弥陀仏様は『私の名を呼ぶものは、皆平等に西方極楽浄土へお連れしよう』という仏様です。つまり、私たちは声に出してお念仏することで、阿弥陀様に極楽往生を願うということになります。
法然上人は、この「お念仏」こそが、誰もが簡単に出来る最善の修行方法であるとお考えになりました。
またお念仏は、自分自身の修行方法であるだけでなく、先立たれた方に対しても『極楽で心安らかにお過ごしください。』という思いを込めて、阿弥陀仏様に向かってするものです。
Q4『極楽浄土』ってどんなとこ?
A.極楽浄土は阿弥陀様のおられる西の彼方にあります。ですので正しくは『西方極楽浄土(さいほうごくらくじょうど)』と言います。蓮の花が咲き乱れ、とても気持ちの良いところです。
極楽では私たちが現在抱える悩みや苦しみの原因である『煩悩(ぼんのう)』から解放され、心穏やかに阿弥陀様のもとでお修行することが出来、私たちがこの世では得ることの出来ない『悟り』を得ることが出来るところです。『悟りを得る』とは「避けては通ることの出来ない物事の真理」を理解したことによって煩悩に悩まさることなく、常に心穏やかな状態のことを言います。
法然上人はこの世では煩悩から脱することの出来ない私たちが、「どうすればお悟りを得て仏様(=悟りを得た人)になれるのか」という苦しみを、『阿弥陀様の御慈悲によって救われる』と説かれました。その阿弥陀様のおられる『西方極楽浄土』へ往生するために、「お念仏」が最も良い修行方法であることはQ3で述べました。
また極楽では先に往生された方々が待っておられます。1度はこの世でお別れした方々と再びお会いし、阿弥陀様のもとで一緒にお修行するところでもあります。
Q5『お経』って何書いてんの?
A.日常勤行にあるお経について1つ1つ何が書いてあるのかは、ここでは説明しきれないですが、総合的に法然上人がお説きなった『性別や身分に関係なく、また善人でも悪人でもお念仏さえすれば、極楽へ往生できる』という、御教えを主旨とすることが書かれています。
浄土宗ではお釈迦様が極楽浄土についてお説きなった『仏説無量寿経(ぶっせつむりょうじゅきょう)』・『仏説観無量寿経(ぶっせつかんむりょうじゅきょう)』・『仏説阿弥陀経(ぶっせつあみだきょう)』という3つのお経を法然上人が選択されて、『浄土三部経(じょうどさんぶきょう)』とし、これを拠り所にしています。
日常勤行で読むことが多い「四誓偈(しせいげ)」は無量寿経から、「真身観文(しんじんかんもん)」は観無量寿経から抜粋されたもので、他にも浄土三部経から抜粋されたものを、単一のお経として読まれたりしています。
Q6『五重相伝』ってなに?
A.略して『五重(ごじゅう)』とよく言ったりしますが、『浄土宗のお念仏の御教えを、檀信徒の皆さんに五つの順序にしたがって伝える法会』のことで、現在は五日間に渡って行われています。
五重相伝(ごじゅうそうでん)では檀信徒の皆さんに、浄土宗の御教えの真髄や、奥義を伝えるため詳しく説明することはできませんが、初重から第五重までお念仏の信仰を深めるためのお話が順序に従ってなされます。
また、ご自身の信仰心を深めるための『修行の場』でもありますので、浄土宗の檀信徒の方には、是非参加をお願いしたいものです。
上福寺では十数年周期で「五重相伝」を行っています。最近では平成十八年に行われました。
Q7『戒名』ってなに?
A.戒名は、仏の弟子になることでお寺からいだだけるものです。仏の教え・戒めに従うことを約束することで授けられるものなのです。
ですから、本来は死後につけてもらうものではありません。生前に五重相伝や授戒会を受けることなどで頂くものです。
浄土宗では、譽号(よごう)といって、○譽とし、字の通りほまれたたえて念仏の篤信者に授与するものがあります。
また院号といって、本来、堂宇を寄進するなどの物心両面にわたる貢献をした信心深い者に授与される称号などが、つけられることがあります。
檀信徒のみなさんにはこうした戒名、法号の意味を十二分に理解してしていただき、自分なりの戒名・法号を授かれるよう、さらに信仰心を深めたいものです。
Q8 『戒名』の読み方は?
A.漢字は漢字でも『呉音(ごおん)読み』という読み方をします。
普段私たちは漢字を読むのに主に2通りの読み方をします。例えば「青」とあれば、訓読みで読めば「あお」ですし、音読み(漢音読み)で読むなら「セイ」の2通りになりますが、冒頭の呉音読みをすれば「ショウ」と読みます。
この読み方の起源は中国にあり、古い中国の南方系の音が日本に5・6世紀頃に伝わったものと言われていて、この読み方がお経や仏教用語などで、現在も継続して使用されています。
よって、戒名もこの『呉音読み』で読むことになるのです。漢字の読み方を調べると、音読み(漢音読み)と呉音読みが同じ漢字も多数ありますが、例示した「青」のように異なる場合があるので、戒名の読み方を判断しにくい場合は1度僧侶に尋ねてみるとよいと思います。